クロスジャム LAB

170cmの私がダンクを実現させるための軌跡を記していきます。

「センス」を持つ龍神【コラム】

秋も終わりに差し掛かり、少し肌寒い空の下

友人とバスケをしていた。


そこは19時に閉まってしまう網に囲われたハーフコート。
スリーポイントシュートを打つと上の網に触れてしまうような小さいコートだ。


それぞれ自らのボールでアップを終える。


彼とは約10年前から1on1をする仲で、もちろんその日も恒例のごとく1on1をした。

 

お互いバスケ三昧だったあの頃とは違っていて、お世辞にもハイレベルな戦いではなかった。

それでも青春の原点といっても過言ではない遊び。つまらないわけがない。


19時に差し掛かったころ、警備のおじさんがやってきてそのコートを締め切った。
今日のバスケは終わりである。


同じ公園であのプレーのことだったり、あの友人のことだったり、あの音楽のことだったりを話していた。

ここまでが昔のルーティンだったような覚えもある。

 

雑談をしていると友人はあることに気づいた。


「ボール、コートの中に忘れちゃいました。」


ここで彼についてを話そう。


この友人はセンスがある人間だ。

そう、「センス」がある。


生き様にはしっかりとした芯があり、具体的なエピソードこそ思い浮かばないが「センスがある」人間である。

 

センスがあるとはそういうことだろう。


その「センス」はもちろんバスケにも如実に表れていて、なかなかこのリズムのプレイヤーは見たことがない。


友人は、そんなことはないと謙遜するが、その「センス」という言葉自体は好んでいるらしい。


そんな彼は近頃悩んでいた。


プライベートで起きた様々によって自信を失いつつあったのである。


精神的どん底も経験しつつ、それでも前を向いて歩いている。


一歩。また一歩。道を進んでいると少しの変化を自らの中に感じていた。


「センス」だけではなく泥臭いこともやってみよう。と。

好きなことをとことん突き詰める彼が、していないと言えるのかどうかは置いておいて、「努力」という言葉に活路を見たようだ。


そんな中、落書きで「センス」と書いたボールが取り出せなくなってしまった、という今日の出来事。


「なんか今の状態を示唆してるみたいっすね。(笑)」


私はそのボールをいつ取りに行くのかを聞いた。
明日になれば必ずそこのコートは空くし、盗まれるほど人の来るようなコートではない。


友人は「センス(ボール)」はいったん置いて次に向かうということを決めたらしい。


この漫画のような見事な出来事に感心しつつ、実は大した出来事ではなかったということで、二人は忘れて飯を喰らいにに自転車を走らせた。


そしてご飯を終えて、私がなんとなく思いついたことを伝えた。
「センスに頼らなくなった現状。ここでセンス(ボール)を取り戻すことで更にいい状態になるんじゃない?」


ボール(センス)を取に行くことを勧めた。


すると友人は納得したかのように後日取りに行くことを決めたようだ。

 

彼にずっと感じていた、「センス」を取り戻すつもりになってもらえる、ということで私はもしかしたらホッとしていたかもしれない。


そして時は過ぎ、
「そういえばボール取りに行ったの?」


ラインを送った。


返信はこうだった。
「冷静に考えたらボールにセンスって書くあたり、あんまセンス良くないって気づいたんで寄付します。(笑)」


何とも彼らしい考え方。


友人は決して「センス」を失ってはいないようだ。


彼と「センス」は切っても切れない。
そう感じた出来事だった。

 

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